恥ずかしながら、33年間の会社勤めの間、家事はほぼ妻に任せきりでした。定年退職して家にいるようになったら、妻から「あなたも家事をやってね」と宣告されまして。当然のことです。でも正直なところ、何をどうやればいいのか皆目見当がつかない。会社では部門の統括をしていましたが、家庭の家事マネジメントは完全に未知の領域でした。
退職してから3ヶ月。失敗を重ねながらも、妻と二人で家事分担のルールを作り上げてきました。同じような立場の男性の皆さんに、私なりの気づきをお伝えしたいと思います。
コツ1:まず「家事の全体像」を把握する
会社で新しいプロジェクトを任されたら、まず全体像を把握しますよね。家事も同じです。妻に聞いたところ、家事というのは大きく分けて「料理」「掃除」「洗濯」「買い物」「ゴミ出し」「家計管理」「子ども・孫関連」と、実に多岐にわたるんですね。
なるほど、知らなかったのですが、料理一つとっても「献立を考える」「食材を買う」「調理する」「片付ける」「食器を洗う」と工程が分かれている。さらに「冷蔵庫の在庫管理」「賞味期限のチェック」なんてものまであるわけです。これを妻は一人でマネジメントしていたのかと思うと、頭が下がります。
まずはノートに家事の一覧を書き出してみることをおすすめします。私はExcelで管理表を作りましたが、妻に「大げさすぎない?」と笑われました。まあ、可視化するのは品質管理の基本ですからね。
コツ2:「得意」と「苦手」で分担を決める
全体像を把握したら、次は役割分担です。ここで重要なのは、得意不得意を正直に認めること。私の場合、料理は若い頃から好きでそれなりに作れるのですが、掃除と洗濯は完全にゼロスタートでした。
妻と話し合った結果、以下のように分担を決めました。
- こうじ担当 ― 料理(平日昼・週末)、食器洗い、ゴミ出し、風呂掃除、洗濯(干す・たたむ)
- 妻担当 ― 料理(平日夜)、掃除機がけ、トイレ掃除、洗濯(洗い・仕分け)、買い物リスト
- 一緒にやる ― 週末の買い出し、大掃除、庭の手入れ
ポイントは「完全に50:50」を目指さないこと。得意な方が多めに担当し、苦手な分野は教えてもらいながら少しずつ守備範囲を広げる。これがうまくいくコツだと実感しています。
コツ3:「やり方」を否定しない・されない仕組みを作る
これが一番大事かもしれません。私が洗い物をした後に妻が「もう一回洗い直してる」のを見てしまったことがあるんですね。正直ショックでしたし、「じゃあもうやらない」と言いたくなりました。
でも冷静に考えると、30年以上のキャリアがある妻と、デビュー3日目の私では基準が違うのは当たり前。会社でも新人の仕事にいきなりベテラン基準を求めたりしませんよね。
妻と話し合って、お互いのルールを決めました。
- やり方に口を出すときは「ダメ出し」ではなく「こうするともっと良くなるよ」と提案形式で
- 担当した家事の仕上がりは、安全・衛生上の問題がなければ基本OK
- 気になる点はその場で伝え、後からまとめて言わない
- 「ありがとう」を必ず言う(お互いに)
コツ4:家事の「見えないタスク」に気づく
恥ずかしながら、退職するまで「名もなき家事」の存在を知りませんでした。トイレットペーパーの補充、排水口のゴミ取り、洗剤の残量チェック、ゴミ袋のセット……。一つ一つは小さいのですが、積み重なると結構な労力です。
妻に聞いたところ、「あなたが気づいてないだけで、毎日何十個もやってるのよ」とのこと。まさに工場の5S活動と同じで、整理・整頓・清掃・清潔・躾を日常的に回し続ける必要があるわけです。
これらの「見えないタスク」に気づくためには、妻の動きを観察するのが一番です。「あ、今トイレットペーパー替えてる」「洗剤のストック確認してる」。気づいたら自分もやるようにする。これだけで妻のストレスは大きく減るようです。
コツ5:完璧を目指さず「続けること」を優先
退職直後は気合いが入りすぎて、完璧にやろうとしがちです。私も最初の1週間は朝5時に起きて掃除機をかけ、朝食を作り、洗濯をして……と頑張りすぎました。当然、1週間で息切れしました。
家事は短距離走ではなくマラソンです。PDCAで言えば、最初は小さなPlanから始めて、無理なくDoできるレベルに調整していく。Check(振り返り)を定期的にやって、Action(改善)につなげる。3ヶ月くらい続けると自然とリズムができてきます。
週末に妻と15分ほど「今週どうだった?」と振り返る時間を設けるのがおすすめです。会社の定例ミーティングみたいなものですね。堅苦しくならない程度に。
家事に役立つ道具 ― 初期投資で揃えておきたいもの
家事分担を始めるにあたり、道具が揃っていないと効率が悪い。妻に教わりながら、最低限の道具を揃えました。
- ゴム手袋 ― 水仕事の基本。手荒れ防止に必須
- エプロン ― 料理だけでなく掃除のときも。服の汚れを防ぐ
- タイマー ― 洗濯機の終了時間、つけ置き時間の管理に。スマホでOK
- メモ帳 ― 妻から教わったコツをメモする。デジタルでもアナログでも
実際にやってみて分かったこと
家事分担を始めて3ヶ月が経ちましたが、正直なところ最初の1ヶ月は辛かったです。慣れない作業に時間がかかり、仕上がりも妻の基準には程遠い。自分がやった掃除を妻がやり直しているのを見て、何度も「もうやめようか」と思いました。
転機になったのは、息子から「お父さんが家事やってるって聞いたよ。すごいね」と電話をもらったこと。会社で部長をやっていたときにも感じなかった種類の達成感がありました。誰かのために何かをする。しかもそれが日常の小さなことである。そこに価値を見出せるようになったのは、退職して良かったと思える変化の一つです。
今では洗い物をしながらラジオを聴いたり、掃除機をかけながらポッドキャストを聴いたりと、家事の時間を自分なりに楽しむ方法も見つけました。家事は「やらされるもの」ではなく「生活を整える行為」だと捉えると、ずいぶん気持ちが楽になります。
よくある質問
Q. 妻に「やり方が違う」と言われてやる気がなくなります。どうすれば?
A. お気持ちは非常によく分かります。私も何度も経験しました。ポイントは「妻は30年のベテラン、自分は新人」という事実を受け入れること。会社の新人時代を思い出してください。先輩の指導を素直に聞いて成長しましたよね。同じことです。ただし、理不尽な指摘は冷静に話し合う必要があります。
Q. 家事をやっているのに「何もしてない」と言われます。なぜ?
A. これは「見えない家事」の認識差が原因であることが多いです。自分では頑張っているつもりでも、妻が日常的にこなしている膨大な小タスクに気づいていない可能性があります。一度、妻が1日にやっている家事を全てメモしてみてください。きっと驚くはずです。
Q. 退職後、家にいるとお互いストレスが溜まります。対処法は?
A. 適度な距離感が大切です。それぞれ一人の時間を持つこと、外出する趣味を持つこと、そして家事という共同プロジェクトで協力する場面を作ること。私の場合は午前中に家事を済ませ、午後は趣味の時間と決めています。